強羅花壇での時間
PASSAGEOFTIME
閑院宮家別邸として建築された建物と
来賓を一心に迎え入れもてなす心、
和心を引き継ぐ強羅花壇が持つ
空気と時間と空間と-
01
沓脱と畳敷と時間
強羅花壇の客室は数寄屋造りに倣った全室畳敷きのつくりとなっています。これは強羅花壇が創業時から変わらず守り続けているこだわりの一つであり、また畳敷*の空間へと誘う客室の門口には過度に主張することのない沓脱石⁑が必ず設けられています。

⁑ 沓脱
沓脱石〈くつぬぎいし〉は元来、俗世と神聖的な空間の境界を設けるために置かれていたものであり、神社や家屋を不浄なものから守る役割を果たしていたものです。そこから発展し現在では縁側や式台に置かれるようになりました。
強羅花壇ではこの「沓脱石を踏み、客室に入る行動」を通じて客室内で流れる時間をより内省的に感じる―内側の感覚を呼覚ますつくりとしています。

* 畳敷
沓脱石を超えて先へと進むと畳敷の空間が現れます。現在の畳の原型は奈良時代から平安時代にかけて形づくられ、板敷の間にて使用する貴族の座具や寝具として普及しました。
ひと、一人が心地よく座り寝転ぶことができる大きさが一枚と定められ、伝統的な畳は五尺八寸の形状、そして香りと色の変化と肌触りとで季節の移ろいを感じるい草で作られています。
強羅花壇では「足裏、そして五感で空間を感じる体験」を通じて客室で過ごす時間をより感覚的に意識するつくりとしています。
強羅花壇の客室はお越しになられるまでに履いていた履物を脱ぎ、沓脱石を踏み、客室へと進む段階的なつくりに。加えて室内では素足など自然に近い状態でお過ごしいただけるつくりになっています―。
そういったつくりとすることで、強羅花壇ではすべてのお客さまが日々の喧騒から離れて心行くまで息抜きできる時間を提供することができるのではないかと考えています。
また大切なご家族、ご友人、そしてご自身や心の内側を省みる時間へと無意識のうちに導く空間性とすることで好い気保養に根差した時間の提供を志向しています。
02
手水と浴衣と空気
強羅花壇では客室に到着すると手を洗い、浴衣に着替えたくなるような空気が流れています。
お客さまを迎え入れる仲居さんは全員着物姿。客室へ向かう際には浴衣*に纏わる話題を持ち出すこともあります。そして客室に着くと自然と手水場⁑に導かれるような空間のつくりをしています。

⁑ 手水
日本には手水〈ちょうず〉という文化があります。神社に参拝する際には手水舎という手を洗う場が設けられており、手水することで自らを清めてから参拝しています。
強羅花壇でも同様に「手を洗うという行為」を通じて単に汚れを落とすだけではなく、日々の雑念を払い、精神的にも浄化した佇まいで滞在していただくつくりとしています。

* 浴衣
浴衣は湯帷子〈ゆかたびら〉という平安時代に貴族が入浴をする際に着用していた白い着衣に起源があります。熱さから身体を守る機能的着衣として使われていた一方で、穢れのない清浄な状態であることを示す象徴的な召物でもありました。強羅花壇では肌触りが良く締め付けの少ない、普段着とは勝手の異なる和服―綿の浴衣に身を包み過ごしていただくことで、強羅の季節や気候をより直に感じ「自然と一体化するような体験」を感じるつくりとしています。
強羅花壇では客室にお着きなられると手を洗い、新たな着衣に身を包みたくなるようなつくりに。自然に身をゆだねて軽やかな心地でお過ごしいただけるつくりになっています―。
そういったつくりとすることで、すべてのお客さまが日常から離れて、軽快な心情でお過ごしいただけるのではないかと考えています。
また大切なご家族、ご友人、そしてご自身や心の内側が軽やかになる感じを受けていただくことで好い気保養に根差した空気の提供を志向しています。
03
庭屋一如と露天温泉と空間
強羅花壇は日本で初めて客室に露天温泉*を取り入れたと言われています。また建築は庭屋一如⁑の考えのもと設計され、建築の内部からも自然を楽しむことが出来るようにつくられています。

⁑ 庭屋一如
庭屋一如とは庭と建築がまるで一体であるかのように自然につながっている様子を表した言葉です。神道の考えが根付く日本ではすべての自然は神が宿る場所であり、古来から自然と調和した空間の形が模索されてきました。
強羅花壇では、そこに在る自然や景色との関係の中における過ごし方に深く配慮し周囲の景観に「軸」をとることで、自然を愛でるだけではなく敬虔なる時間や空間の中に身を置くことのできるつくりとしています。

* 露天温泉
温泉は古来日本では万病に効くと言われ、大地の神からの恵みであると信じられていました。 温泉に宿泊する療養する湯治という文化が生まれ、病や傷を負ったもの、日頃の疲れを癒したいものが多く訪れました。
強羅花壇では、客室ひとつひとつに露天温泉を用意し、お客様が誰にも気兼ねすることなく贅沢に温泉を楽しむことが出来るつくりになっています。
強羅花壇では建物のどの箇所においても、その土地の景観の移ろいが感じられるつくりに。自らの身ひとつで温泉に浸かることで、眼前に広がる自然の中に自らを没入させることのできるつくりになっています―。
そういったつくりとすることで、日々の喧騒に埋もれがちな自分の心と、ゆっくりと向き合うことができるのではないかと考えています。
また大切なご家族、ご友人、そしてご自身や心の内側を省みる時間へと無意識のうちに導く空間性とすることで好い気保養に根差した空間の提供を志向しています。