女将から

お客様に一番近い客室係に大切なのは「心」

女将 藤本三和子

私は元々イタリア語の通訳をしていて、海外での仕事が多かったのですが、その中でお会いした世界各国のVIPの方々が「日本の旅館に泊まってみたい」と口々におっしゃっておりました。けれども当時1970年代には、おすすめできる旅館が関東圏にはなかなかなかったんです。そこで、私の祖父がゲストハウスを営んでいたこの強羅に、「もっといい旅館を作れないか」と考えました。これが、強羅花壇のはじまりです。右も左もわからない状態でこの仕事を始めましたので、仲居の経験のある方から着物の着かたを教えていただいたり、器やお料理のことを一から勉強したり、少しずつ、試行錯誤しながら歩んできたことを今でも覚えております。

開業以来28年間、一貫して「お客様に喜んでいただきたい」という気持ちを大切にしてきました。強羅花壇は、他の旅館とは少し違うと思うんです。それは、営業的な部分を前面に打ち出した経営理念ではない点。会社として利益を出し成長していかなければならない一方で、強羅花壇のような小規模な旅館でお客様が望んでいらっしゃることは「仕事を機械的にさばいていくようなやりかたではない」ということです。

お茶を一杯お出しするのでも、心をこめて提供させていただく。雨でお客様の傘や靴が濡れてしまっていれば、すべて乾かし、磨いて、翌朝お返しをする。お車でお越しのお客様には、わたくしどもで綺麗に洗車をし、ピカピカのお車でお帰りになっていただく。お料理や空間、しつらえまで、どうすればご満足していただけるのか、ひとつひとつを思慮深く積み重ねた結果が、世界各国のお客様から高く評価をしていただいている、現在の強羅花壇につながっているのだろうと思います。

旅館の仕事にあってはどの職種も等しく重要ですが、お客様に一番近い距離で接客をさせていただくという点で、客室係はとても大切な役割です。お部屋にご案内し、襖が閉まって、お客様と一対一になった時、旅館のすべては客室係に委ねられます。イギリスにはバトラーという仕事がありますが、バトラーというのは靴の磨き方から洋服のかけ方まで、厳しく訓練された者でないとなれません。その日本版が、私は客室係だと思うんです。おもてなしのプロフェッショナルとして、お客様に感動を与える。奥が深く、誇りをもて、一生の仕事としてキャリアを形作ることができる。それが、客室係の仕事だと思います。

お客様に喜んでいただきたい。その心さえあれば、たとえ旅館やホテルでの接客経験がなくとも、これから本当に素晴らしい客室係になっていっていただけるのではないかと思います。もちろん、仕事は楽しい側面ばかりではありません。体力も必要ですし、常にお客様のことを最優先に考えた動きが求められます。しかし、お客様がお帰りになられる際、「またあなたに担当してもらいたい」と言っていただけた時の喜びはこれ以上ないもので、客室係にとって一生の財産になります。また、普段はお目にかかれない世界各国のVIPの方にお越しいただくことも多くあります。その方々にお世話をできるというだけでも、本当に楽しい仕事だと思います。

旅館というものは、日本の文化を凝縮したものです。衣食住、すべてにおいて和を感じられる唯一の空間だと思います。強羅花壇では、「日本にいる」ことを楽しみたいというお客様のために、毎年必ず畳を張り替えております。新しい井草の香りは、より一層、和の情緒を引き立てます。

わたくしどもは、そうした日本の伝統を後世に伝えながらも、随所で時代性に合ったものを的確に取り入れてまいりました。旅館でエステやジムを取り入れたのも、強羅花壇が初めてです。これから世の中がどのように変わったとしても、守るべきものは守り、変えていかなければならないものは先駆者として挑戦していく。それが強羅花壇です。

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